第1回 はじまりの物語
「生きとし生けるもの すべて太陽のもとにあって 平等に生きている」
このメッセージに出会って、もうかれこれ10年位たったでしょうか。
いつの日か、TERRAのオリジナル作品を創る時がきたら、
是非テキストにしたいと思っていました。
と、指揮者ヒロシは書いています。(『TERRA20周年記念演奏会パンフレット』)
彼をその気にさせた水上勉『ブンナよ、木からおりてこい』は、こんなお話です。
【ブンナの物語】
ブンナは木登り上手で冒険好きのトノサマガエル。ある秋の日、土ガエルたちを
びっくりさせてやろうと、椎の木に登っていきます。
てっぺんの開けた所に出てみると、そこは、とても眺めのいい所でした。
ところが事態は一転、鳶に捕えられた動物達が次々と運ばれてきて、
ブンナはあわてて土の中にもぐりこみます。
椎の木のてっぺんは鳶の餌の貯蔵場所だったのです。
愚痴をこぼし、弱音を吐き、恨みをぶちまける百舌や雀や鼠たち。
やがて、阿鼻叫喚が鎮まると、あとに残された瀕死の鼠が、
ブンナに語りかけます。
「おれの体から出てくる羽虫を食って元気になりたまえ」
鼠はそう言い残して死んでしまいました。
そこに、傷ついたつぐみが連れてこられます。死んだ鼠の横で、つぐみは、
シベリアで死に別れたおかあさんにむかって美しく悲しい歌を歌います。
「私はおかあさんのいいつけを守って日本の山野に種子をまきました」。
長い冬眠を終え五月の太陽の中を降りてきたブンナは、
カエルの仲間達に向かって力強く歌いかけるのです。
「みんな、なにかの生まれ変わり。ぼくらのいのちは、大ぜいのいのちの一つ。
生きているものはみな、いのちのかけはし・・・」
…むむむ
ミュージカルやアニメではなく合唱曲のテキストとして、
果たして使えるものだろうか?
あらすじだけでは、それは、まだ見えてきません。
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