創作曲のできるまで 「ブンナ」を創る |
第13回 山鳥のほろほろと鳴く声聞けば─或いは、陰の物語
猫である。
現在の名前はこちらだ。 竹垣が破れた家へ這入りこんで、そこを住家[すみか]と決めた。 この家の主人は何といって人に勝れて出来る事もないが、 何にでもよく口を出したがる。 いつぞやは奈良時代の坊さんの歌に次のような理屈をつけた。
山鳥のほろほろと鳴く声聞けば父かとぞ思ふ母かとぞ思ふ 行基
これは輪廻転生の古代仏教思想を背景に持つ歌であるが、
ブンナの両親といっても
もう長くはない俺を食って生き延びろと
ブンナに多くを遺す間もなく天敵に食われた父母は、
思えば成長とは親たちの「生」の追体験であろう。
かくの如き次第で、勝手な理屈を述べ立てて倦むところがない。 |