第2回 水ぬるむ五月
原作を通読すると、童話の語り口の裏に込められた
作者の思い/想いが伝わります。
ものごころついてから何事も意のままにしてきた人はともかく、
自分の弱さ
ままならぬ事の多さ
などに気づいた人にとって、
原作に散りばめられた言葉たちは親しみをおぼえるものでしょう。
この「想い」を合唱曲の聴衆に伝えるには、歌うべきテキストを
原作の言葉たちの中から選び取らなければならない。
さいわい『ブンナ』には作曲を待っているようなテキストが
いくつかあります。
代表的なものが、物語の結末で主人公がうたいだす
水ぬるむ五月がきたよ
で始まる歌。
物語全体のメッセージを伝えようとする歌でもあります。
かつて指揮者ヒロシも作曲を試みたことのあるこの歌を
作業の「とっかかり」とすることにしました。
物語の流れに出来るだけ沿いながら"起承転結"の「結」として
この「水ぬるむ五月」にたどり着く、
そんな合唱組曲を組み立てようと考えたのです。
後になって、この歌は
作曲者を決定するうえで重要な役割を果たします。
でも、それは、またのお話。
次に考えなければならないのは
木に登るまでと椎の木のてっぺんで出会う出来事を
原作のどの場面から採用するか、ということです。
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