第24回 いのちのかけはし
第3曲「鼠が最期に言ったこと」は
原作の鼠の言葉をそっくり採用したので
独唱曲でなければ“語り”になるだろうと、
当初から予想されていました。
独白に合唱がハミングで寄り添う曲を
根岸圭さんは書いてくれました。
作曲者によれば全曲中もっとも簡単だからとのことで
最後に届いた曲だったけど
合唱団は苦戦を強いられましたね。
平明な曲なので、きっちり歌わないと、
きっちり歌ってないことが露呈してしまうのです。
けっして安泰とは云えなかった合唱のもと、
本番で歌い果せたのは
鼠の独白を語った堀池 高彰さんのおかげです。
堀池さんは、いえ鼠は俺を食えとブンナに言い、さらに
決定的なメッセージを残して死にます。
きみは、ぼくになるんだから
前後関係から「ぼくになる」と鼠は言ってますが
ここは
「ぼくは、きみになるんだから」
と言ったほうが正確かも(存続体はブンナ)。
このメッセージから、ブンナは、
食物として食べ[または]食べられることで命を継承することを
いのちのかけはし
と呼び、
命の継承をみんなで行うことで
みんなだれかの生まれかわり
という事態になっていることを学びます。
でも、ほんとかよ?
確かに、ブンナの学んだことは、
食物連鎖を受け入れる解釈のひとつ、とは云えますね。
あるいは、
「おまえはいつでも死ぬ覚悟はできているか」(文庫版p.81)と
老蛙から問われてブンナが考えついた「死」の定義かもしれない。
それにしても若いブンナがよく納得したものだね。
食べられて消化されてしまえば
「ぼく」とか「きみ」とか、
つまり「自分」は継承されず消えてなくなるのに。
鼠の身になってみれば
我が子へバトンを渡す心だろうと推察できますが、
「処女航海」に乗り出したばかりのブンナにとって
それは、まだ、これからのこと。
ブンナ役を演じた高嶌 志保さんの清澄な声で語られると
ブンナの言い分に、つい納得させられてしまうけれど。
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