bunnah
創作曲のできるまで
「ブンナ」を創る

第8回 圭さんに聞く1 

けいさん? 根岸 圭【ねぎし けい】さん
千葉県在住。1999年東京芸術大学作曲科卒業。作曲を佐藤眞、福田陽 両氏に師事。
TERRAの演奏会後、邦楽のワークショップに参加し作品を発表。
仕事が一段落したので、あらためて大学院進学の準備を始めたところです。

▼作曲を引き受けてもよいと思ったのは?
伯父と父から話を聞きましたので。

◎スケジュールに無理がないこと、
◎依頼内容が自分の守備範囲であること
この二つの条件を満たす話が
先生や知人・友人から持ち込まれれば
あまり迷うこともなく私は引き受けてきました。

作曲に限らず一般的な仕事を引き受ける場合と
特に違いはないと思います。

▼テスト版に「ミミズクの歌」を選びましたね。
深刻にならずにすむ題材を選んだのです。
解釈に議論の余地のあるテキストを選ぶと、
作る側も判断する側も面倒ですから。
▼最初にあがった第5曲「水ぬるむ五月」は、新幹線の車中で浮かんだ旋律とか?
「浮かんだ」というより「思い浮かべた」わけですが…

「水ぬるむ五月」はマドリガルのようなイメージ
と 私の耳に吹き込んだ人がいて、
マドリガル風のパターンを思い浮かべてみたのです。

皆さんの反応がイマイチだったので、
第5曲本体はそのとおりにはなりませんでしたが。

▼「水ぬるむ五月」は、TERRAの嗜好に精一杯歩み寄って作ったと推察します。
TERRAの好みの曲・好みの傾向を探るのに苦心しました。

皆さんの間で「君をのせて」(『天空の城ラピュタ』主題歌)が人気
と聞いたことや、TERRAのレパートリーを考慮に入れました。

ただ、そうした作業は、
「既に在る曲」のイメージに自分をすり寄せて行くことになり、
個性的であろうとする作曲姿勢とは相容れないものなので、
自分の中で葛藤がありましたね。

▼指揮者ヒロシの試作曲は参考になりましたか?
南荘さん個人の好みと受け取りました。

例えば『カルミナ ブラーナ』を歌おうとしていることから、
メンバーの誰もがやさしい曲を好んでいるというわけでもあるまい、
と判断しました。

「水ぬるむ五月」は、
皆さんが思い浮かべる標準的な合唱曲にするよう努めました。
伴奏も、合唱曲によくあるパターンにしました。

▼ということは、もうひとつ別の、 "ヨリ圭さん的な"「水ぬるむ五月」の可能性も?
可能性としては、そうでしたが、
でも、あの曲は一所懸命書きましたから、
書かなかった曲に対する未練は全くありません。


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